カテゴリ: 戦術

練習時間も少ないし、もうそんなに動けないし、フルセットデュースなんてやったら勝っても負けてもその後の試合は、体力切れで試合になんない。

何とか頑張らないで勝つ方法はないだろうか?楽して勝つとはどういうことだろうか?

教えて孫武先生!



ということでまた孫子の話。

今回は孫子の謀攻篇

僕は頑張らないで勝つ=戦わずして勝つということだと考えました。そして戦うとは、戦術を介さない単なる技量の比べ合いと解釈しました。


『百戦して百勝するは善の善なる者にあらざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり。故に上兵は謀を伐つ。その次は交を伐つ。その次は兵を伐つ。その下は城を攻む。』

百回戦って百回勝つことは最善ではなく、戦わずに敵を屈服させることが最善。よって最上の策は敵の謀略を阻止すること、次に敵の友好国との同盟を断つこと、その次に野戦での敵兵の撃破すること。下策は城攻め。



これを卓球に置き換えて僕が解釈すると

謀を伐つ
→相手の得点パターン・得意パターンを潰す

交を伐つ
→相手の得点パターン・得意パターンと対になる、または補助となるパターンを潰す

兵を伐つ
→ラリー等の戦術を介さない単なる相手との技量の比べ合い。正面からの打ち合い。

城を攻む
→相手が待ち構えているところに打ち込む。





ドライブマン同士のラリーの引き合いは派手だし、楽しいけど、策としては最善ではない。


最善の策は、相手の得点パターンを潰して、やることを無くさせること。



最悪は相手の待ち構えているところに打ち込むこと。

相手がブロック得意で待ち構えているのに、そこに一生懸命ドライブを打ち込むのは、自分は頑張って気持ち良くなっているかもしれないが、策としては下策。この前の僕の試合は、まさしくそうでした。





よくよく考えると当たり前の話なんですが、相手の主戦力を無力化すれば、頑張る量も少なく済みます。




上兵は謀を伐つ

これを頭に入れて、しばらくは高校生に嫌がらせをして勝つおじさんを目指します。


1.情報収集能力
2.情報分析能力
3.作戦立案能力
4.作戦実行能力

この4つの能力が必要。
技術が関係するのは作戦実行能力のみ。

技術なんて、作戦を実行するための道具でしかない。なければ別の道具でも代用可能なことが多い。


この4つが極めて高いと思うのは、中国チーム。
中国の個人の選手というより、中国の国家として高い。

ライバル選手の情報を国家をあげ徹底的に収集し、分析する。じゃなきゃコピー選手なんて作れない。

そして、収集、分析した情報をもとに元世界チャンピオンの壮々たる首脳陣が作戦を立案する。

そして基本技術を徹底的に鍛え上げた選手がそれを実行する。



日本はどれくらい情報戦に力を入れているのだろうか?
個人的には試合前の情報戦で勝てなくては、試合には勝てないと思う。

Lili TVの指導者対談の渡辺コーチに共感して、僕も僕なりの孫子の解釈を書いておこうと思う。



今回は13篇のうち、最も好きな虚実篇について書く。


1.虚実とは何か
孫子で述べられている虚実とは、空虚と充実といった意味で述べられている。軍の配置が薄い部分を虚、厚い部分を実。といった具合である。


2.卓球における3つの虚実
卓球においては、虚実は3つに分類される。すなわち

・技術的虚実
・身体的虚実
・意識的虚実

これらを単体、もしくは複合的に組み合わせて戦術は構成され、競技レベルが上がる程より複雑になっていく。

戦術を端的に述べるなら、いかに自分の実にボールを打たせて、いかに相手の虚にボールを打つか?これらの方法が戦術である。


3.技術的虚実
卓球における3つの虚実を細か見ていく。

まずは技術的虚実。
これはある特定のボールに対する技術の上手い下手である。

例えば、下回転ボールがバックに来た時、一撃で得点出来るドライブを持っていたり、ドライブを含め様々な技術を様々なコース、長短に打ち分けられるようなら、これは実である。
逆にバックに来た下回転をドライブしてもミスが多かったり、下回転に対してはツッツキでクロスのみにしか返球出来ないようなら、これは虚である。

競技レベルが上がれば、単純な技術的虚実、特に虚の部分は少なくなっていき、フォアを突かれた後のバックやフォアを二回つかれる等、より複雑になっていく。
トップ選手ともなれば、高度に複雑化し、一般人ではおよそ虚といえないような技術でも、それが虚となり失点につながる場合がある。


4.身体的虚実
これは手が届く位置届かないコース取り、もしくは充分なスイングが確保出来るコース取り、出来ないコース取りのことである。
どんなに速いボールを打っても相手が構えているところ、つまり実の箇所に打っては得点にならない。逆に遅いボールでも相手が構えていない箇所に打てば、得点または得点出来るチャンスになりやすい。

競技レベルが低い内は単純に手が届く届かないといった部分が目立つが、競技レベルが上がるとミドル攻め等の充分な体勢で打てるかどうかといった部分の割合が多くなる。



5.意識的虚実
これは『待ち』のことである。待っているところが実で、待っていないところが虚である。
身体的虚実は物理的な身体とボールの位置であるが、意識的虚実は脳内での『待ち』とそれ以外である。

個人的にはこの『待ち』の読み合い騙し合いといった駆け引きに、卓球の面白さを最も感じている。


6.2つの性質と実際の運用
これらの3つの虚実の中で戦術、つまり自分の実に打たせて相手の虚に打つ方法を考えるのだが、その上で必要な3つの虚実の性質を考える。
それは、見えやすさと切り替えのスピードである。

どこが虚でどこが実なのか?という見えやすさ。
虚と実の切り替えが速いのか遅いのか?というスピード。

この2つの性質を理解しておく必要がある。

・技術的虚実について
見えやすさ・・・中
切り替えスピード・・・試合中は切り替え不可

切り替えスピードに関して言えば、技術的な虚を実にするのは試合中は不可能である。それは練習で行うことである。

技術的虚実は試合を進めるにつれ相手の得意、不得意が見え、また相手にも自分の得意、不得意が見られるようになる。

この虚実の情報をいかに相手に渡さないか、いかに相手の情報を正確に早く読み取るか、ここが勝負のポイントになってくる。技術的虚実は試合中での切り替えが不可能なため、一度相手の虚を掴めれば、一試合通して効果がある可能性が高い。



試合前に相手の前の試合を見て研究し情報を読み取り、こちらは見せ球、ブラフ等を交えて情報の発覚を出来るだけ遅らせる。

理想を言えば、試合前に相手の長所短所を全て把握し、そこから自分の長所短所を絡めて考えて全体の戦略と数多の戦術を用意出来ている状態、かつ相手には何も情報が渡っていない状態が望ましい。

孫子にも「彼を知り己を知れば百戦危うからず」「算多きは勝ち算少なきは負ける」「勝兵はまず勝ちてしかるのち戦いを求む」など事前の情報戦と作戦立案の重要性が述べられている。

「勝負はやって見なければ分からない!」などというものは、孫子の兵法ではあってはならない。戦争は国家の存亡を賭けたものであるから、そんな事を言う者に軍を統率する資格はない。


・身体的虚実について
見えやすさ・・・大
切り替えスピード・・・中

身体的な虚実については構えた段階で虚実が一目瞭然である。台の下に伏兵を配置出来るはずもなく、虚実が構えた段階でそのまま見える。

また切り替えスピードについてはフットワーク、ボディワーク、グリップワーク等の能力に依存する。


この虚実がまる見えの状態、相手に情報が渡っている状態は逆に相手の行動を予測したり、誘導したりする時に役立つ。

虚実の形を相手に示し、他の2つの実を絡めることで、孫子の言うところの「善く敵を動かす者は、之に形すれば、敵必ず之に従い、之にあたうれば、敵必ず之を取る。利をもって之を動かし卒をもって之を待つ」という状態に出来る。

要するに


であったり、またはこれの一つ目

これも自らの形を示して相手の待ちを誘導している。


もちろんこれらには、身体的虚をカバー出来る能力が必要になる。

虚のように見せて実、実のように見せて虚。
孫子は兵は詭道なりと述べたが、卓球もまさしく騙し合いなのである。


・意識的虚実について
見えやすさ・・・小
切り替えスピード・・・速い

時々、顔や体に出ている人もいるが基本的に相手がどこに待ちを作っているかは外からは見えない。
また、どこを待つかの切り替えも脳内でのことなので時間を要さない。

競技レベルが上がる程、この要素の割合が増えていくように思う。


相手に自分の待っているところにボールを打たせ、相手の待っていないところにボールを打つ。

言葉にすれば単純だがこれを実行するには、ゲーム間、ポイント間を含め常に相手の一挙手一投足に注意を払い、また相手に自分の一挙手一投足がどのように映るのかを考え、頭をフル回転し続けなければならない。

これらが出来れば「人を致して人に致されず」「善く攻むる者は、敵その守る所を知らず、善く守る者は、敵その攻むる所を知らず」となるのであろう。



7.究極のプレイスタイル



孫子で述べられている、究極の軍隊の形とは何か?
それは無形にして無声。姿も見せず声も聞こえない軍隊こそが究極の軍隊。形も声も無ければ、間者もその実態を把握することは出来ず、どんな軍師も智謀を巡らすことは出来ないのである。

そして水にも例えられる。
水は一定の形を持たず、流れる地形によって形を変える。
同じように理想的な軍隊は相手に合わせて形を変える。水が高い所から低い所に流れるように、相手の実を避けて虚をつくのである。

同じように卓球でも相手に合わせて戦術やプレイスタイルを変更出来る技術の幅と思考の柔軟性が重要である。
そのために練習で様々な対戦相手を想定して、技術と戦術の幅を広げ、実際の試合では相手がどのようなプレイヤーなのかをいち早く判断する、観察力と推理力が必要になる。

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問題 
図の長方形ACFHとその各辺の中点B、D、E、Gにおいて、以下の角度を求めよ。
角DFE
角DGE
角BFC



高校数学なんてすっぱり忘れてしまいましたのでググって計算してくれるサイトで調べてみたした。

角DFE=約48°
角DGE=約58°
角BFC=約13°



おおよそこれくらいになりそうです。実際にはネットを超えて相手のコートに落とさなければいけないのでもっと角度は小さくなります。


何が言いたいかというと、単純に台を広く使いたいなら、ミドルから打つのが角度が最大になるということです。

ただ試合に出てみると、角BFCくらいの範囲内のサーブが多いような気がします。

ミドルからフォア前・バック前を狙う場合と単純に4倍くらい差があります。



コースは回転やモーションなどに比べて比較的簡単に出来る変化です。

器用でもなければ練習量も確保出来ない人は、サーブはコース取りを工夫して練習した方が効果は高いと思います。
また、回転量や分かりにくいモーションなどはそれ自体が難しいので、サーブそのもののミスでの失点と、浮いてしまう、台から出てしまうことによっての相手に攻撃されての失点のリスクが、高くなります。

とりあえず中級者の社会人プレイヤーは、そんな回転量もいらないし、分かりにくいモーションもいらないので、ちょっと下回転、ナックル、ちょっと上回転、ちょっと横回転、ちょっと逆横回転のサーブを自分のバック、ミドル、フォアから相手のフォア前、バック前、ミドル前、フォアロング、ミドルロング、バックロングに出せるといいと思います。
たいてい何処かは相手の弱いところがあります。

バックから出されるサーブに対してのレシーブは普段から練習している人が多いですが、ミドルからのサーブに対しての練習はバックからのサーブに対する練習に比べて練習量が少ないので、効く場合が結構あります。
特にフォア前は角度がつくので、バックからサーブを出す時よりも、より遠くに相手を動かすことができます。フォア前、バック前で相手を前とサイドを意識させられれば、今度はミドルロングなども効いてきます。



ということでミドルからサーブをコースに打ち分けて出せると結構効くと思います。

ただし、その分バック側があくのでバックの技術はある程度必要です。

僕のサーブの時とレシーブの時の考え方。


テニスではサーブ権があるゲームをとるのをキープ。相手にサーブ権があるのをとるのをブレイクという。

この言い方はサーブを持つことの有利であり、同等レベルの相手との試合では、基本的にはサーブ権がある方がゲームを高確率でとれるということである。

お互いキープし続けている状態だと、当たり前だかどこかでブレイクした方が一気に試合が優勢になる。

 メンタル面や試合の流れを考えた場合、キープは守備的。ブレイクは攻撃的というふうになる。




卓球について考える。
卓球も基本的にはサーブ権がある方が有利である。
極端に言えばサーブ権がある時に10割キープ出来ればレシーブが1割入ればゲームは取れるのである。


僕の目標はサーブで7,8割キープしてレシーブで3,4割ブレイクしたい。

この数値で出来れば、11-9でゲームが取れる。

サーブで7,8割キープが見込めるなら、レシーブの時は3,4割得点出来ればいいのだから、ある程度リスクを取って攻撃的にいく。ミスしてもそれが7割を超えなければ、それは計算のうちである。
相手のサーブが少しでも甘ければ、ぶち抜きにいく。ミスしてもそれは計算のうちなので問題ない。サーブをキープし、レシーブは強気で攻める。
そうやって相手にプレッシャーをかけていく。







って出来ればいいんですけどね。
まぁ前提としてサーブでしっかり得点が見込めないと難しい。
サーブでの得点率によって、レシーブでとれるリスクが変わってくる。

結局は『サーブ、大事』ということです。

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