2020年05月

サーブの要素は大体、『コース・回転・スピード・分かりにくさ・低さ』の5つだと思う。

これらを全てハイレベルで行うことが出来れば、すごいサーブになると思う。
しかし、それには膨大な練習時間が必要である。正直僕は毎日2時間サーブ練習しても出来るようになる自信はない。

そして社会人には毎日2時間サーブ練習する時間がある人はまずいないのではないかと思う。

全ての要素を満たすのは無理があるから、いくつかの要素を捨てなくてはならない。
個人的には2つか3つ要素を満たせれば充分いいサーブだと思う。

まず全体に必要な要素は『低さ』

なので、『低さ』+『別の要素』となる。

では『コース・回転・スピード・分かりにくさ』の中で、どれがいいのだろか?

個人的オススメはコース。

理由は他の要素に比べてコスパがいいからである。

コースに打ち分ける練習は工夫がやりやすく、効率的に上達しやすい。
また、どんな対戦相手にも一定程度の効果が見込める。

練習時間に対しての試合での貢献度が他の要素に比べて高い。
なので僕は、コースがコスパが高いと思うのである。

限られた練習時間の中で試合に勝つことを目的にするなら、どんな練習、何の技術がコスパが高いか考えないといけない。

初中級者のうちは、まずチェスの駒を自分の思った所に動かせない。

例えば、フォア前に下回転サーブを出そうと思っても、台から出たり、ナックルだったり、ミドル前だったり、ボールが高かったり。

卓球のチェスの部分にたどり着くには、練習に多くの時間を費やす必要がある。

1.情報収集能力
2.情報分析能力
3.作戦立案能力
4.作戦実行能力

この4つの能力が必要。
技術が関係するのは作戦実行能力のみ。

技術なんて、作戦を実行するための道具でしかない。なければ別の道具でも代用可能なことが多い。


この4つが極めて高いと思うのは、中国チーム。
中国の個人の選手というより、中国の国家として高い。

ライバル選手の情報を国家をあげ徹底的に収集し、分析する。じゃなきゃコピー選手なんて作れない。

そして、収集、分析した情報をもとに元世界チャンピオンの壮々たる首脳陣が作戦を立案する。

そして基本技術を徹底的に鍛え上げた選手がそれを実行する。



日本はどれくらい情報戦に力を入れているのだろうか?
個人的には試合前の情報戦で勝てなくては、試合には勝てないと思う。

Lili TVの指導者対談の渡辺コーチに共感して、僕も僕なりの孫子の解釈を書いておこうと思う。



今回は13篇のうち、最も好きな虚実篇について書く。


1.虚実とは何か
孫子で述べられている虚実とは、空虚と充実といった意味で述べられている。軍の配置が薄い部分を虚、厚い部分を実。といった具合である。


2.卓球における3つの虚実
卓球においては、虚実は3つに分類される。すなわち

・技術的虚実
・身体的虚実
・意識的虚実

これらを単体、もしくは複合的に組み合わせて戦術は構成され、競技レベルが上がる程より複雑になっていく。

戦術を端的に述べるなら、いかに自分の実にボールを打たせて、いかに相手の虚にボールを打つか?これらの方法が戦術である。


3.技術的虚実
卓球における3つの虚実を細か見ていく。

まずは技術的虚実。
これはある特定のボールに対する技術の上手い下手である。

例えば、下回転ボールがバックに来た時、一撃で得点出来るドライブを持っていたり、ドライブを含め様々な技術を様々なコース、長短に打ち分けられるようなら、これは実である。
逆にバックに来た下回転をドライブしてもミスが多かったり、下回転に対してはツッツキでクロスのみにしか返球出来ないようなら、これは虚である。

競技レベルが上がれば、単純な技術的虚実、特に虚の部分は少なくなっていき、フォアを突かれた後のバックやフォアを二回つかれる等、より複雑になっていく。
トップ選手ともなれば、高度に複雑化し、一般人ではおよそ虚といえないような技術でも、それが虚となり失点につながる場合がある。


4.身体的虚実
これは手が届く位置届かないコース取り、もしくは充分なスイングが確保出来るコース取り、出来ないコース取りのことである。
どんなに速いボールを打っても相手が構えているところ、つまり実の箇所に打っては得点にならない。逆に遅いボールでも相手が構えていない箇所に打てば、得点または得点出来るチャンスになりやすい。

競技レベルが低い内は単純に手が届く届かないといった部分が目立つが、競技レベルが上がるとミドル攻め等の充分な体勢で打てるかどうかといった部分の割合が多くなる。



5.意識的虚実
これは『待ち』のことである。待っているところが実で、待っていないところが虚である。
身体的虚実は物理的な身体とボールの位置であるが、意識的虚実は脳内での『待ち』とそれ以外である。

個人的にはこの『待ち』の読み合い騙し合いといった駆け引きに、卓球の面白さを最も感じている。


6.2つの性質と実際の運用
これらの3つの虚実の中で戦術、つまり自分の実に打たせて相手の虚に打つ方法を考えるのだが、その上で必要な3つの虚実の性質を考える。
それは、見えやすさと切り替えのスピードである。

どこが虚でどこが実なのか?という見えやすさ。
虚と実の切り替えが速いのか遅いのか?というスピード。

この2つの性質を理解しておく必要がある。

・技術的虚実について
見えやすさ・・・中
切り替えスピード・・・試合中は切り替え不可

切り替えスピードに関して言えば、技術的な虚を実にするのは試合中は不可能である。それは練習で行うことである。

技術的虚実は試合を進めるにつれ相手の得意、不得意が見え、また相手にも自分の得意、不得意が見られるようになる。

この虚実の情報をいかに相手に渡さないか、いかに相手の情報を正確に早く読み取るか、ここが勝負のポイントになってくる。技術的虚実は試合中での切り替えが不可能なため、一度相手の虚を掴めれば、一試合通して効果がある可能性が高い。



試合前に相手の前の試合を見て研究し情報を読み取り、こちらは見せ球、ブラフ等を交えて情報の発覚を出来るだけ遅らせる。

理想を言えば、試合前に相手の長所短所を全て把握し、そこから自分の長所短所を絡めて考えて全体の戦略と数多の戦術を用意出来ている状態、かつ相手には何も情報が渡っていない状態が望ましい。

孫子にも「彼を知り己を知れば百戦危うからず」「算多きは勝ち算少なきは負ける」「勝兵はまず勝ちてしかるのち戦いを求む」など事前の情報戦と作戦立案の重要性が述べられている。

「勝負はやって見なければ分からない!」などというものは、孫子の兵法ではあってはならない。戦争は国家の存亡を賭けたものであるから、そんな事を言う者に軍を統率する資格はない。


・身体的虚実について
見えやすさ・・・大
切り替えスピード・・・中

身体的な虚実については構えた段階で虚実が一目瞭然である。台の下に伏兵を配置出来るはずもなく、虚実が構えた段階でそのまま見える。

また切り替えスピードについてはフットワーク、ボディワーク、グリップワーク等の能力に依存する。


この虚実がまる見えの状態、相手に情報が渡っている状態は逆に相手の行動を予測したり、誘導したりする時に役立つ。

虚実の形を相手に示し、他の2つの実を絡めることで、孫子の言うところの「善く敵を動かす者は、之に形すれば、敵必ず之に従い、之にあたうれば、敵必ず之を取る。利をもって之を動かし卒をもって之を待つ」という状態に出来る。

要するに


であったり、またはこれの一つ目

これも自らの形を示して相手の待ちを誘導している。


もちろんこれらには、身体的虚をカバー出来る能力が必要になる。

虚のように見せて実、実のように見せて虚。
孫子は兵は詭道なりと述べたが、卓球もまさしく騙し合いなのである。


・意識的虚実について
見えやすさ・・・小
切り替えスピード・・・速い

時々、顔や体に出ている人もいるが基本的に相手がどこに待ちを作っているかは外からは見えない。
また、どこを待つかの切り替えも脳内でのことなので時間を要さない。

競技レベルが上がる程、この要素の割合が増えていくように思う。


相手に自分の待っているところにボールを打たせ、相手の待っていないところにボールを打つ。

言葉にすれば単純だがこれを実行するには、ゲーム間、ポイント間を含め常に相手の一挙手一投足に注意を払い、また相手に自分の一挙手一投足がどのように映るのかを考え、頭をフル回転し続けなければならない。

これらが出来れば「人を致して人に致されず」「善く攻むる者は、敵その守る所を知らず、善く守る者は、敵その攻むる所を知らず」となるのであろう。



7.究極のプレイスタイル



孫子で述べられている、究極の軍隊の形とは何か?
それは無形にして無声。姿も見せず声も聞こえない軍隊こそが究極の軍隊。形も声も無ければ、間者もその実態を把握することは出来ず、どんな軍師も智謀を巡らすことは出来ないのである。

そして水にも例えられる。
水は一定の形を持たず、流れる地形によって形を変える。
同じように理想的な軍隊は相手に合わせて形を変える。水が高い所から低い所に流れるように、相手の実を避けて虚をつくのである。

同じように卓球でも相手に合わせて戦術やプレイスタイルを変更出来る技術の幅と思考の柔軟性が重要である。
そのために練習で様々な対戦相手を想定して、技術と戦術の幅を広げ、実際の試合では相手がどのようなプレイヤーなのかをいち早く判断する、観察力と推理力が必要になる。

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